【商業BLレビュー】『愛傷コレクション』葵居 ゆゆ

  • 普通の文章がエロい!行間がエロい!文学的エロスなBL小説
  • 年上紳士攻めの溺愛っぷりと言葉攻めがすごい
  • 前半と後半で受けの性格が豹変「優しくされるのってむずかしい」受けがカワイイ!

商業BLはいろいろ読みまくっていますが、あまりのエロさに言葉をなくし、これまでにないほどドキドキしたのが葵居 ゆゆさんの『愛傷コレクション』。

正直いうと、表紙もあらすじもあまり興味がなかったのですがAmazonのレビューが非常に高かったので「どんなものだろう」と興味本位で購入。

脳天打ち砕かれた気分です。

心身共に傷ついたひねくれ少年&余裕たっぷり紳士

主人公の十有(とも)は、母の再婚相手である義父から性的虐待を受け続け、心を病んで自分自身を刃物で刺した過去を持っています。

義父、母、そして弟からも余りもののように扱われ続け、家を飛び出した後、悪い男に拾われ、暴力じみた性交を強要され続けてきました。

ある日、「このままでは自分の命が危ない」と危機感を覚え、男の元を逃げ出した十有は、自分を追う気配から逃れようととある家の庭先に入り込み、そこで力尽きます。

目覚めた十有は、その家の主である花賀屋から、しばらく屋敷に滞在し、傷を治すよう諭されます。アンティークを扱う仕事をする花賀屋は、傷ついて補修されたアンディ―クの器を愛でるように傷だらけの十有の体を毎朝「点検」するようになり……

 

という、ちょっと倒錯的なストーリー。

十有は恐らく20歳前後、花賀屋は40歳ほどと歳の差カップルです。

すれた態度で花賀屋に接する十有ですが、花賀屋に大切に扱われるうち次第に彼を意識するようになります。

正直、最初の10ページと後半の十有は全くの別人のようですが、それが全然違和感ありません。

小生意気な少年をうまく手なずけた紳士の物語とも読むことができます!

葵居 ゆゆさんの文章から溢れるエロス

著者の葵居 ゆゆさんが書かれた本を読むのはこれが初めてだったのですが、葵居さんの書かれる分がいつもそうなのか、それともこの『愛傷コレクション』が特別なのか

文章がエロい!!!

かなり長くて濃厚な絡みもあるのですが、絡んでないところの文章もエロくて、絡んでいるところはプラスアルファどころかアルファタイムス!倍増!二乗!三乗!すごいよ!!

こんなに色気のある、艶っぽさがぽたぽた滴ってくるような文章を読んだのは本当に久しぶりかも。

じゃあ以前はなんだったたんだと言われると思いだせないくらい、強烈にエロかったです。文章が。いや、行間が。

エロがエロいんじゃなくて、プレイがエロいんじゃなくて、(いや、もちろんそれも十分すぎるほどエロかったのですが)何もないときの文章と行間がエロいんです。

だから、ほぼ全編にわたって空気がエロいのね、淫靡なの。

特に、花賀屋が十有を「点検」するようになってからがもう……

言いようのない卑猥さを感じさせる空気がありつつも、花賀屋は十有を溺愛しているので、愛にあふれている感もしっかり感じられて、読んでてもう、ドキドキしつつもニヤニヤしちゃってヤバかったです。私の語彙力のほうがヤバいな。

BLってエロスあってなんぼじゃないですか。読む側がそれを期待しているところもあって、どんどんエロスがヒートアップしている感もありますが、

攻めと受けがやっていることがヒートアップしていると作品が持つ全体の空気もエロスに包まれるのかというとそうでもないなと感じています。

エロが長くて全体の中で絡みの割合が増えれば、そりゃもう「すごいな」って感じになるけど、でも本当にすごくて読み返すのは、なんでもないような文章の中に艶があって、行間に濃密な何かを感じさせる小説だよなと思います。

それがまさに『愛傷コレクション』でした。

とりあえず短期間に3回くらい読み返した

私はだいたい1回読むとそれで満足して、その後読み返すことは稀。よっぽど気に入った作品は内容を忘れたころにもう一度読むこともあるけれど、くらいな感じの読書スタイルなのですが

『愛傷コレクション』は、1カ月くらいの間に3~4回読み返しました。

なんでこんなにくり返し読んでいるんだろうと自分でも謎だったのですが「さりげない文章から感じるエロス」を感じたいんだろうなあと……。

そして読み返すたびに「エロいなぁ……(溜息)」と大満足するのです。

すごいな、『愛傷コレクション』。

何度も私を満足させてくれている!

絡みももちろんすごかった

全編を通してエロスにあふれている作品なわけですが、絡みもすごかったです。

最近のBL小説を読むと時々出てくる「男の潮吹き」というやつ、正直私はあまり好きではなくまったく萌えなかったのですが、この作品で「うわぁ……すご!(喜)」と認識を新たにしました。

あれ、いいね!

ちょっと癖になるね。もっと読みたくなる!

それから、十有は義父から「お尻だけで達するのは恥ずかしいことだ」と言われてそう思い込んでいて、花賀屋に抱かれている間もその認識のままなのですが

自分のそういう感受性を花賀屋に知られたら嫌われてしまうのではないかと怯えながら行為をしている場面なんかも

非常~~~に、おいしかったです!

もう大好物。素敵すぎて……

そんな十有を褒めちぎりながらかわいがる花賀屋も、「うぅん!」と言葉にならない唸りが出そうなくらい、素敵な(変態)紳士っぷりで、たいへんおいしゅうございました。

私は、BL小説でエロと言えば西野花さんだろう!とずーっと思ってきましたが、西野さんを(違うルートから)越えていったなと感じたのが葵居さんの今作でした。

とまあ、ベタ褒めしましたが、読んで損はないと自信を持って言える作品です。

(優しい)変態紳士攻めとそれに翻弄される一途な受けがお好きな方は、ぜひ!

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