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【商業BL小説レビュー】『ロマンス不全の僕たちは』月村 奎

不愛想美形攻め×気遣い包容力受け(美容師・同僚同士の恋)

 

ナチュラル

読後爽やか

攻めが俺様

受けが一途でかわいい

もう長い間、恋をしている。

 

美容師の昴大には秘かに想う相手がいた。
芸能事務所にスカウトされるほどかっこよくて、
才能があって、だけどどうしようもなく愛想がなくて
言葉がきつい同僚、遠藤進太郎だ。
周囲からは明るくムードメーカーと思われている昴大だが、
本当は傷つきやすく、臆病な一面を持っていた。
だから、遠藤にも告白するつもりはなく、
今の、一番親しい同僚という立ち位置で十分なはずだった。
それなのに、遠藤の地元へ引っ越して、
遠藤の美容院で働くことになってしまい!?
無口無愛想×隠れ繊細のハートフルラブ登場!

切ない系とコメディ系がいい感じにミックスした月村作品

月村奎さんの小説といえば、超不幸なけなげ受けがめちゃくちゃ優しい紳士攻めに出会ってベタベタに愛されて癒される切ない系か、強気でおバカででもイケメンな受けが包容力攻めに恋をしてカレの前でだけ情けない顔をさらけ出す爆笑コメディのどちらか、という印象がありました。

私はどっちも大好きで、その時の気分で選んで買っていたのですが、2020年01月31日に発売された新作『ロマンス不全の僕たちは』は、そのどちらでもなく、いいかんじに”中間”を味あわせてくれる良作でした!

主人公は人当りの良い接客業をするために生まれてきたかのような優しい男、増井昴大。自分の性癖には気づいていたけれど誰にもカミングアウトすることなく、そしてこれまで誰とも付き合うことなく生きてきます。

そんな増井が長年片思いしているのが、同じ美容院に務める同期の遠藤。才能もあり超イケメンだけど歯に衣を着せぬ物言いをして不愛想な遠藤は増井と正反対。

けれど、遠藤が地元に戻り、亡き母が残した美容院を継ぐことになったとき、増井は酔った勢いで遠藤に「えんちゃんは客商売に向いていない、えんちゃんを良くわかってサポートできる人材がいないと無理だ、それは俺だ」と言ってしまい、流れで遠藤の美容院に採用されて……

という物語です。

主人公の増井は人当りは良いけれど、一言も美形だと書かれていない普通の男。

そして増井が恋する遠藤は超絶不愛想で「うざい」が口癖になっているいけ好かない男、というBLにはあまりない設定

……なのですが、これが良かった!!!

超包容力受け、増井くん

この作品、かなりパンチの強い攻めの遠藤を、受けの増井が包容力たっぷりに受け止めて、うまく周囲の緩衝材になっているんです。

っていうか、月村作品でこれだけ包容力ある受けって……すごく珍しいのでは。

もちろん、遠藤もただの嫌な奴じゃなくて、影でそっと増井をサポートしていたりはするんですけど、この作品はとにかく受けの増井が魅力的。

自分の恋は実らない、ずっと片思いだと諦めて自分が遠藤に恋をしていることを必死で隠し、遠藤と幼なじみのすずを「お似合いだ」と見守っていたりして、でもそれが全然悲壮感なくてサラッと描かれています。

設定だけだと超切ない系にもなりそうなのに、湿っぽいところが全然なくて、いい感じにドライで爽やかで、とても好感度高いです。

うじうじした受けが嫌い、女の子みたいな受けが嫌い、という人は多いけれど、これは多くの人が「好きだな」と思い受け入れられる受けなのではないかと思います。

いろんな意味で等身大の、20代後半の男性です。

増井くんの行動がとにかくかわいい

増井は自分が遠藤に思いを寄せているのを悟られないために、「実は東京に遠距離恋愛している彼女がいる」設定にしていて、いろいろ小芝居を打っています。

その小芝居が……とにかくカワイイ!

「わかる!わかるよ……!!!!」

と言いたくなる増井の行動すべてが甘酸っぱくて、これが『CHERRY』とか『50番目のファーストラブ』だと爆笑ルートに進むのだろうと思うのだけれど、コメディではない今作では、ひたすら読者の「わかるよ……!!!」をくすぐって、その「わかるよ」な反応をする増井がとにかくかわいいんです。

特に物語中盤から後半にかけては、「増井かわいい」の場面がすごく多くて、何度本を閉じて溜息をついたことか……!

嫌味のないカワイイ言動をついしちゃう受け、最高。

恋が実り結ばれる場面の、攻め遠藤の俺様が最高

少しネタバレになりますが今作はハッピーエンドなので、2人の思いが通じ合って結ばれる場面もあるのですが、このときの攻め・遠藤がとにかく俺様で、その俺様感が最高です。

増井の言動がとにかくカワイイなら、遠藤は俺様すぎてクスッと笑えるレベル。

一歩間違うとすごく嫌な奴にもなりそうなのですが、物語が遠藤に恋している増井視点で描かれていていい感じに増井の優しいフィルターが入っているので、「なんだこいつ」にはなりません。

むしろ、そんな王様遠藤に心底惚れちゃっている増井が、遠藤との対比で3割増し余計可愛く感じられます。

読後爽やか、後味の良い1冊でした。

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