【商業BLレビュー】『ギヴン』キヅナツキ◆2020年映画公開!

  • サラッとしているのにグサッと抉る青春BLマンガ
  • 繊細な心理描写と絶妙なセンスの言葉選びが秀逸
  • アニメと原作でWに楽しめる

2019年の夏アニメで、ノイタミナ枠初のBLとなったのが、キヅナツキさん原作の『ギヴン』。高校生の男の子2人と大学生、大学院生の4人の物語で、題名の『ギヴン』は彼らのバンドです(とはいっても、アニメでは10話までそのバンド名が出てこないので、見ている人にとっては意味深な題名だったはず。

この『ギヴン』、原作がものすごくいいから!と知人に勧められて読ませていただいたのですが……

良かった。

めちゃくちゃ良かった。

「いいもの読んだ―!!!!」感満載で、超満たされた。

アニメ先に見ていたけど、アニメで描かれていないエピソードが最高にキた!!!!ので、ぜひ原作を紹介させていただこうと思います。

※画像出典:公式サイト https://www.shinshokan.com/given-comic/index.html

アニメでははっきり描かれていない、年上組の恋模様


アニメでは高校生でギターの上ノ山立夏とギターを弾きつつボーカルを務めることになる佐藤真冬の恋が中心に描かれて……

と言っていいのか迷うくらい、バンドのことや真冬の過去のことも描かれていています。

で、そこに何となくドラムの梶秋彦にきれいな黒髪の彼氏(?)がいるっぽい場面とか、ベースの中山春樹が秋彦を意識してるっぽい描写があって

「え、こっちはどうなってるの?」

と気になっている人も多いのでは!

(9月19日放送の最終回では、春樹が秋彦を思っていることがはっきりと描かれていました)

そうなのです。

「ギヴン」のコミックスは2019年9月時点で、5巻まで出ているのですが、前半は上ノ山と真冬の恋が描かれ(これはアニメとほぼ同じ)4巻くらいから、春樹と秋彦、そして秋彦の「同居人」であるヴァイオリニストの村田雨月に焦点が移ります。

このね、4巻以降の年上組の話が、

めーっちゃエモいの!!!!

いや、むしろギヴンここでしょ!?っていうくらい、すっごい切なくて、ぐちゃぐちゃしてて、いいんですよ。

で、コミックスの1巻や2巻ではとってもサラッとしか描かれていなかった年上組の、微妙な距離感がアニメではうまいこと取り入れられていて、それもまた萌えます。

でも、でもね。ギヴンは、年上組の恋模様をぜひコミックスでじっくり味わってほしいよ。

それくらい、深くて切ないんですよ!

好きな人には「他の誰かがいる」苦しさ

これはアニメを見ていても分かるのですが、ベースの春樹は秋彦に恋をしています。

けれど積極的にそれを押し出すようなことはせず、ひたすら自分の中で気持ちを温め続けていて、何も起こらなければこのまま言わずになかったことにしてしまうのでは、という空気を感じさせつつ、秋彦を好きになってからずっと髪を伸ばし続けています。

秋彦はというと、上ノ山の姉をはじめ女にモテモテ。お小遣いをくれるお金持ちな年上の女性ともお付き合いがあるのですが、高校時代に出会ったヴァイオリンの天才・村田雨月が好きで、雨月の家に転がり込んで居候中。

付き合っていた時期もあるけれど雨月にはすでに振られていて、今の雨月には他に彼氏もいるので、秋彦の言葉を借りれば「セフレ兼ヒモ」です。

春樹はある時期まで秋彦に同居人がいることも知らなかったのですが、秋彦が誰と住んでいるのか、そしてその相手をどう思っているのかを薄々察していくことになります。

自分の想いを外には出さない春樹と、雨月を好きなままの秋彦は「バンドの仲間」として接し続けます。けれど秋彦は春樹が自分を好きなことを勘付いていて、それを利用するような行動を取り、春樹を深く傷つけてしまうのです。

もうこれがね。

いや、よくある話、よくあるネタと言えばよくあるんですよ。他のNLでもBLでも出てきてるかもしれないんだけど

傷つけられた春樹が秋彦に対して取る言動がね。ちょっとね、かなりスゴイというか、いいんです。

これはもう、「原作読んで!」としか言えないんだけど、表情も言葉もかなり印象的で、

「この人、すごいなあ……ヤバい、春樹めっちゃ好きだわ、こいつすっごいいい男だわ」

と。

他に誰かがいる相手を好きになってしまったときの苦しさというか切なさというか、自然に諦めなくちゃいけないんだろうなあというところにいるやるせなさがね、もうたまらないです。

なのに、同じグループで一緒に音楽をやっているがゆえに、距離を取ってスッパリ諦めることも難しい相手に、どう接していくかというね。

すっごい難しくて苦しいところに立たされている春樹が、ひたすらカッコイイんですよ。

秋彦の気持ちの変化が超納得できる

秋彦自身も、すでに振られた相手を思い続けるという苦しい恋愛をしていますが、春樹と過ごすうちに次第に気持ちが変化していきます。

これがね。

すごく説得力あるの。

こう、誰かを好きになる過程っていうのを、じっくり丁寧に描いてある小説とかマンガって、実はそんなに多くないと思うんですよ。

一目ぼれ的な感じで、なんかすごいきれいなコマに恋に落ちる人がかっこよく(美しく)描いてあって、それで「フォーリンラーブ!」みたいなのが多いんじゃないかという印象があって

相手のどういうところが引っかかって、どんな時間を積み重ねたから惚れたのかっていう、些細な気持ちの移り変わりをね、納得できるところで書いて(描いて)ある作品って、あまり多くないなと。

けれど、ギヴンはそれがすごく理解できた!

ああ、こういう時間を一緒に過ごしていたら、そりゃあ自然と好きになるよなぁ……と。

そう思わせてくれる貴重な作品でした。

秋彦から見た春樹が、とてもとても美しくて、「ああこれ、まさに恋に落ちる魔法がかかりつつあるやつね」っていう優しい気持ちになりました………

これさあ、映像の続編こないのかなあ。上ノ山×真冬の高校生組のお話ももちろんすごく良かったんだけど、年上組の話もじっくり見たいよ。

ギヴン2期、ありませんかね???

(2019/9/20追記)

って書いてたら、映画化が告知されましたねーー!!!

しかも春樹と秋彦、雨月の年上組に焦点が当たるそうで……

やばい、楽しみ!

ティザーも公開されています♪

いつ、いつ公開なのかな!?

今発表ってことは夏かなあ。個人的には1年後になっちゃうけど秋くらいがいいなあ。けど早く見たいなあ……

というわけで、アニメもとっても良かったのですが、アニメを見て「ギヴン面白かったな」と思った人には、ぜひ原作で、アニメではじっくり描かれなかった年上組の話も読んでほしいです。

読んで損はしない……約束します。

ちなみにギヴン、バンドの公式SNSアカウントがあります。

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