2部、秋組の物語「ボーイフットコラージュ」
注目されていた莇がメインのストーリーということで、楽しみにしていた人も多かったのではないでしょうか!
私もワクワクしながら読ませていただいて、もう最後は感涙の嵐でした……
やっぱり秋組、いいよね~~~
7幕「ボーイフットコラージュ」を振り返ってみます。
莇と左京さん
7幕の中心となるのが、新入団員となる莇と莇が強く反発する左京さんです。
6幕で家出をしてきて、そのまま寮に住み着いていた莇でしたが、ついに銀泉会の会長である莇の父親がしびれを切らして「何が何でも莇を連れ戻す」と迫田に告げます。
それがきっかけとなり、莇は「秋組に入る」と宣言。
けれど左京さんは断固反対!
莇が本気で芝居をやりたいわけではないことが理由です。
寮のリビングで殴り合いのけんかを始める2人ですが、九門の提案とちょうどそこへやってきた雄三さんの押しもあり、莇もオーディションを受けることになります。
折しも、雄三さんの劇団の公演が間近ということで、莇は秋組のメンバーたちと同じく、前座でポートレイトを披露することになるのです。
万里の二の舞……?
莇の面倒をずっと見ていたという左京さんがいることで、莇は過去の自分を演じ、左京さんにそれを見られるのを嫌がります。
その結果、かつての万里と同じように創作の過去でポートレイトを演じようとするのです。
秋組のリーダーとして莇の面倒見ようと申し出た万里は、莇のポートレートを見て、「それは本当の話じゃないだろ」とバッサリ。
過去の自分を思い描きながら、作り話ではオーディションには合格できないことを伝えます。
万里のアドバイスを受けてポートレイトを作り直した莇。
莇が題材にしたのは、左京も知らない「少年時代の家出」でした。
新人とは思えない落ち着きと堂々とした演技で、観客からの高い評価を集めた莇は、無事、秋組の一員としてMANAKAIカンパニーに迎え入れられたのです。
秋組第4回公演は「メイクが活かせる物語」
春組、夏組に引き続き、新入団員を主演とした物語にしようという流れになり、せっかくだから莇のメイクが活かせる物語にしよう!ということになります。
ビジュアル系バンドや宝塚っぽいのなどいろいろなアイデアが出ますが、特殊メイクという流れからゾンビもいい、という話に。
綴が一人、物語の構成を考えているとそこに莇がやってきて「リクエストしてもいいか」と綴に問いかけます。
莇のリクエストは「左京と敵対する設定してくれ」ということ。
入団したばかりで脚本へのリクエストを口にしたのは莇が初めて。
綴は「大物だなあ」という感想を抱くのです。
それぞれの「家出」
莇が自らのオーディションで披露したポートレイトは、子どもの頃の家出が題材でした。
秋組のメンバーそれぞれにも、子どもの頃、家出をした記憶があり、彼らは折に触れて莇に
「お前のポートレイト見てて、思い出した」
と、自分が家出したエピソードを語って聞かせるのです。
太一は、幼い頃隣に住んでいた女の子に会いたくて家出をした話。
臣は母親を亡くした後、母親の代わりに家事をして家族を支えようとし、いっぱいいっぱいになって家出をします。
十座は小学校であらぬ疑いをかけられて誤解されたことがきっかけで家出。
万里はすでにイージーモードだった自分の世界にある日突然うんざりして家出をしたことがありました。
どのエピソードもほろ苦くて、痛くて、でもそれがあったから今の彼らがいるんだよなあ、という。
今の視点から過去を振り返っている、それぞれの「今」だから抱ける思いも、また良かったです。
秋組と莇との関わりで印象的だったのが、太一がかつてのスパイ行為を莇にも告白したこと。
「あーちゃんも秋組の一員だから」と、今更言わなくても良いだろう話を莇に伝えます。
そんな太一から、本当にあの出来事を悔いていることが伝わってきますし、あえてそれを莇に伝えることができる、太一の強さが眩しいなと思いました。
そして、誰とでもうまくやれていた臣が、莇になぜか嫌われてしまうというエピソードも……
本当は嫌っているわけではなかったのですが、団員とすれ違うことを気に病む臣が新鮮で、そして臣に対してどう接していいかわからない莇も可愛かったです。
このエピソードの流れから、臣にとってはカンパニーの年下メンバーは全員弟のようなものなのだということもわかり「家族」という裏テーマをひしと感じた一場面でした。
仁義王カード
莇と左京さんの出稼ぎ会話で「仁義王カード」について、少しだけ語られています。
この仁義王カードの正体が、7幕の物語の中で明らかになります。
九門と一緒にいた莇が怪我をして救急車で運ばれ、パニックになった九門が寮に電話をかけてきて「莇が怪我をした!」と伝えたことから、左京さんが取り乱して自分の眼鏡を割り、監督が車を運転して、2人が病院へかけつけます。
けれど実際は軽いかすり傷程度で、怪我というような怪我ではありませんでした。
莇は自分の眼鏡を壊すほどに取り乱した左京を見て驚きます。それがきっかけとなり、激しく左京さんに反抗していた莇はあらためて左京さんと向き合うのです。
このときに出てくるのが「仁義王カード」
市販のカードを「チャラチャラしてる」と父親に捨てられてしまった莇のために、「極道に関係しているものならいいだろう」と左京さんが手作りしたトレーディングカードで、2人はそのカードを使い、昔たくさん遊んだという思いでがあったのです。
実は手作りトレーディングカードを左京さんが使って遊ぶのは、これが2度目。
少年時代の左京さんも、クラスメートが持っているようなカードが欲しかったけれど貧しかったため、デッキに必要な枚数を買うことができませんでした。
それが左京さんの家出ストーリーにも関係しています。
そんな左京さんのために、お母さんがカードを手作りしてくれたのです。
この、左京さんの思い出が……もう本当に泣けました。
すごく良い話でした。そしてとても切なかったです……
古市左京という人物の、まっすぐさや無念さ、少年時代の悔しかった思いがひしひしと伝わってきて
今までそれほど左京さんに注目したことはなかたのですが
この7幕を読んで、左京さんがすごく好きになりました!
莇とメイク
莇はメイクアップアーティスト志望ですが、いったいなぜメイクアップアーティストなのかというのにも、しっかりした理由がありました。
その前に。
天鵞絨美術大学で行われるファッションショーに、助っ人として幸と莇が参加するというエピソードがあります。
そのファッションショーには万里がモデルとして参加していて
幸と莇も、高校生・中学生とは思えない働きをして重宝されます。
そんな莇に、ファッションショーの手伝いに来ていたOBから「高校生になったら、自分のところでバイトをしないか」という誘いがかかるのです。
ところが、莇は表情を曇らせ、すぐに「はい」ということができません。
そんな莇を見た幸は「プロの技術を盗むチャンスじゃん。俺なら絶対に行く」と告げます。
メイクアップアーティストになるという自分の夢を貫き通したい。
でも、銀泉会も莇にとっては大事で、跡取りとして期待を掛けられていることもわかる。そう簡単に家族や銀泉会を捨てられない。
板挟みになって苦しんでいたのです。
幼なじみの志太のところにいることになっていた莇が、劇団に入っているということは莇の父である銀泉会の会長には絶対の秘密でしたが、うっかり迫田さんが第4回公演のフライヤーを落としたことで、莇がMANKAIカンパニーに入団したことがばれてしまいます。
激怒した父親は、会の連中を使って学校帰りの莇を拉致して連れ戻し、それを知った監督たちは会長の家に莇を取り返しに向かいます。
「これは身内の問題だから」とMANKAIカンパニーの面々がこれ以上関わるのを避けようとした左京さんでしたが、
万里のこんなカッコいいい一言があり、秋組全員と監督で、銀泉会へ向かうのです。
莇がメイクアップアーティストを目指すことにも、芝居をすることにも大反対だった会長ですが、万里の助言により、莇はなぜ自分がメイクアップアーティストを目指すようになったのかを、その場でポートレイトを演じて伝えます。
「まさか、そんな理由だったとは」という驚きのポートレイトで、もう号泣でした……
あの設定に、こんな深い理由が、過去があったとは。
まだ読んでないひと、読んで!!
一日限りの狂狼復活も
さて、莇は十座のようにけんかをふっかけられやすいタイプ。
ストーリーの中盤にも
莇が絡まれているところに十座がさっと助けにはいるという場面がありました。
このとき莇に絡んでいた相手が、莇がMANKAIカンパニーに入って芝居をしているということを知り、千秋楽の日に莇を拉致するという暴挙に出ます!
莇が車に乗せられるところをたまたま見ていた迫田さんが跡をつけ、監禁されているところに、秋組全員で助けに行くという「まさに秋組!」という超テンションが上がる展開もあって
ヤバイ、秋組カッコよすぎる!
のひとことです!
莇を助けに行って、全員でケンカをしてくるわけなんですが
狂狼の復活もあり「うわぁぁぁ」という、すごくおいしすぎるストーリーです!
ほかにもこんな面白い場面が!
7幕は、芝居についてはそれほど描かれていなくて(莇がそつなくこなせるタイプということもあり)、団員の過去や成長が中心。
莇と左京さん中心になってはいますが、バランスよく全員が登場します。
夏組が活躍する場面もあって、楽しかったです!
ほかにもポロポロと笑える場面がいっぱいあって
久し振りに実家に帰省した綴は、ひたすら掃除するだけで実家での時間が終わっていたり
莇がビックリするほどのピュアさを発揮して太一を驚かせたり(笑)
読み応えありました!
カフェ組による、カフェでの場面もありました~!
そうそう、そして銀泉会は、迫田さんが継承することになりそうです!
8幕とその先の展開への伏線
さて、7幕の中で貼られている最大の伏線が
シトロンを迎えに来た、というガイの登場。
シトロンの国、ザフラ王国に綴の兄と千景が訪れたことがあるいう話もあり、絶対君主制で情勢が少し不安定になっていること、綴の兄はザフラ王国がすごく気に入っていることが語られています。
また、莇の幼なじみの志太も役者を目指そうと決め、なんとGOD座のオーディションを受けています。
まだルックスは非公開の志太。
これからどうかかわってくるのか……楽しみです!
もう本当に、7幕、良かった!
ネタバレと書いていますが、バラしていない部分も多いので、ぜひぜひ、ご自分の目で見て、耳で聞いて、かっこよくて、そして切なさを抱えた秋組を味わってほしいです。
本当に良かった……良すぎて、痺れました。
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Audibleがすごい!★★★★