声優養成所に通って、卒業前の審査で事務所への所属が決まって、そしたら次はデビュー!
誰もが思い描く夢ですが、これ、難易度は同じではありません。
養成所から事務所に所属するのだって、まず大変。
けれど事務所に所属したらそれで終わりではなく、次は「仕事をもらう、声優の仕事で稼ぐ」をしなくちゃいけません。
そして、この「仕事をもらう」がすごくすごく難しい。
事務所に入って、仕事がもらえない現実にぶつかったとき「養成所から事務所に入るのなんて、今思えば全然大変じゃなかった……」と思うくらいなのです。
仕事がもらえないまま辞める声優がとても多い
ぶっちゃけ、事務所に入ったものの仕事が全くもらえなくて(取れなくて)仕事を一つもしないまま、自ら辞めていったり、クビになったりする新人もたくさんいます。
事務所によっては、ある程度の実績がある(仕事をしたことがある)人しかホームページの所属声優のページに記載していないので、
「パッと見は所属している声優が少なそうだけど、全員有名! 知ってる! 活躍している!」
と思っても、
「実は、HPにすら掲載されていない声優がいっぱいいる」
ことも珍しくないのです。
「声優になって仕事を取る」ことがどれだけ難しいかが少しは伝わったでしょうか。
声優は、事務所に所属してからその先がとても大変だし、さらに、「継続して仕事を取る」「声優の仕事だけで生活していけるくらい稼げる」のはもっともっと難しくて大変なのです。
初めて仕事をもらったのは、所属して1年後
これは、元声優で今は引退して違う仕事をしている私の話です。
私が所属したのは中堅の事務所で、同期は7人くらいいました。
事務所の勉強会で顔を合わせる先輩が15~20人くらい。
あとは勉強会には参加せずオーディションでどんどん仕事を取っているらしい先輩と、勉強会でも会わないし事務所でも会わない、存在が不確かな先輩たちがたくさん。
事務所の勉強会は毎週あり、所属して5年に満たないくらいの「新人たち」が来ていました。
ひとりだけ、オーディションでたくさんの仕事をしている先輩がいましたが、「確実に仕事をしている」のはその一人だけ。
あとは、事務所に所属して毎週勉強会に来ているけれどまったく仕事をしたことがない人たちばかりで、未だに養成所の延長のような感じでした。
私も同じくです。
事務所に入れば、オーディションの話をちょくちょくもらえると思っていましたが、そんなことはなく。
所属して半年後に初めてオーディションの打診を受けましたが、それはドラマのオーディションで、声優の仕事ではありませんでした。
たまに先輩から「マネージャーから18禁の作品に出られるかって聞かれた」なんて話を聞きましたが、「出られるか聞かれた」だけで実際に出たという話はききませんでした。
「事務所に入っても、仕事なんてないんだ……」
という現実に打ちのめされつつ。それでも一生懸命養成所でがんばって、なんとか所属できたのだからと気持ちを奮い立たせて勉強会に通い続け、けれど、たった一人の「定期的に仕事をしている」先輩以外は、同期も先輩もだれも仕事をもらったなんて話を聞かない。
「この先、どうなるんだ?」
と思っていたころです。
オーディションを飛ばして、いきなり指名で仕事が来ました。
事務所に所属して、1年と数カ月過ぎた頃でした。
同期で1番早い出世だった
間違いなく同期では一番最初に仕事をもらったのが私です。
おそらく、1年先輩、2年先輩の中でも仕事をしたことがない人がほとんどだったので、「ここ数年の間に所属した新人の中では、唯一の」仕事を取った新人だったのではないかと思います。
これだけ聞くと「どれだけヘボい事務所なんだ」と思われそうですが、一応ある程度名前の通った事務所でした。
じゃあ、私が飛びぬけて才能があったかというと、そんなことはありません。
養成所では講師陣からかなり手厳しく指導されましたし、明らかに「先生に嫌われた……」と思われる事件も何度かありました。
「君は有能だから、すぐ売れるよ」なんて言われたことはもちろんありません。
正直、養成所の同期や先輩たちを見ていて、「だいたいみんな、50歩100歩だな。そんなに変わらない。私も同じだ」と感じていました。
じゃあ、そこから頭一つ抜き出るためにはどうしたらいいのか。
自分を磨くのみです。
誰より努力して、技術を磨いて、どんぐりのせいくらべの中から、突き抜けなければ選ばれないと感じ、ものすごくいろいろなことをしたんですよね。
というわけで、「同期で一番早く仕事を取った」新人声優の私が何をしていたかを具体的に紹介します。
休日0日、毎日稼働、帰宅は深夜
当時、私はある企業に派遣社員として勤めていて、平日は朝8時半から17時半まで毎日仕事をしていました。
養成所時代は毎週土曜日にレッスン、事務所に所属してからも毎週土曜日は勉強会で、だいたい午後から夜までずーっとレッスン。
けれど声を出す前に体を起こさなければいけないので、養成所時代から、朝9時には教室に行って自主練をしていました。
自主練をしていたのは私ひとり。何度か一緒に自主練をした人もいましたが、いつのまにか誰も来なくなり、一人で午前中から体を動かし、発声練習していました。
日曜日は午後から22時までみっちり演技のワークショップ。
平日は、仕事の後「ボイトレの日が1日」「演技レッスンの日が3日」で、それぞれレッスンを終えて自宅に帰宅すると0時を回るか回らないかという時間。
夜、何の予定もない日というのが平日の2日だけでしたが、そこは家に帰って家で自主練。
本当に「ただぼんやりする」時間がまったくないような日々を過ごしてきました。
友人から遊びに誘われても、週末はレッスンか勉強会だし、平日の夜もワークショップやレッスンで、全然時間を作れず断ってばかり。
今思い返すと「よくあんなハードな生活をしていたな」と思うのですが、好きなことをしていたのでなんとかできたんですよね。
けれど、事務所の同期にも先輩にも、私ほど「仕事と睡眠以外の時間を全部レッスンにつぎ込む」ことをしていた人はいなかったと思います。
私が同期で一番最初に仕事を取れたのは、「それだけ、やっていたから」だと思うのです。
スマホでゲームをすることもなく、アニメを見ることもなく、本は通勤の電車の中で読む程度で、本当に趣味らしい趣味もなく、声優になるためのレッスンに時間を費やしました。
テレビを見るのは朝食を食べながら見るニュースで15分くらい。
帰宅すると深夜で、次の日も6時半には起きて身支度をして仕事に行かなくてはいけないので、速攻でシャワーを浴びて寝る、という生活。パソコンは持っていたけれど、めったに触ることもなかったように記憶しています。そんな時間なんてありませんでした。
ほとんど毎日何時間も、そして週末は半日以上使って練習を重ねてきた私でも、最初の仕事を取るまで1年以上かかりました。
きっと、売れっ子の声優さんは、私なんかの比じゃないくらいの時間と密度でレッスンを重ねているのだと思います。
私が声優を引退したのは、そこまで努力できなかったから。努力するモチベーションを保てないことを自覚したからです。
あなたが「声優になるための自分磨き」に使っている時間はどのくらい?
さて、質問です。
今、声優を目指しているあなたや、事務所に所属しているけれど仕事がないというあなたは、1日の中で何時間くらい、声優になるためのレッスンや自主練をしていますか?
1週間では?
1か月では?
私の練習量を超えられそうでしょうか。
もし超えられるなら、きっと事務所に所属できるし、正しく努力できていれば仕事もとれると思います。
けれど、「そんなには練習してない…」「できない」というなら、仮に事務所に所属できたとしても、その先を望むのはかなり難しいでしょう。
女の子ならすごくかわいくて、権力のある男性にかわいく媚を売り続けられればいけるかもしれませんけど…。
めちゃくちゃに努力しつづけなければ、仕事はもらえない世界。
それが声優業界です。
売れてる人は、それを当たり前にしています。
ゲームをしている時間も、だらだらテレビを見てる時間もないんですよ。ほんとうは。
ぼーっとしていても夢はかないません。
叶えるための努力を、毎日、毎時、毎秒続けなくては。
声優になりたかったら、続けてください。
そして、努力する時間を毎日5秒ずつ伸ばしていって、密度も濃くしていってください。
そうすれば、きっと夢はかないます。
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