声優事務所に直結している声優養成所に入ろうと考えた時、「どの養成所がいいのだろうか」と悩む人もいるでしょう。
声優事務所が運営する声優養成所に入るということは、(うまくいけば)その事務所に所属できることになるからです。
大手声優事務所が運営する声優養成所を選ぶメリットとデメリット
まず、大手にはすでにたくさんの声優が所属しています。
そのため、「養成所も運営している以上、実力があって売れそうな子がいれば事務所に所属させるけれど、そんなにたくさんはいらない。むしろすでに人材は余っているくらい」という大人の事情もあるため、まず「所属する」ハードルが非常に高いです。
かなり上手で魅力的な人でも、「似たような声優がもう所属しているから」という理由で所属できないリスクがあります。
また、所属した後でも事務所内でオーディション枠の取り合いが起こるため、そこから売れていくのはかなり大変です。
ただ、大手ならではのメリットもあります。
- 大手事務所にしか来ない、「事務所指定の仕事」がある
- 先輩のパーターとして作品に出演できる可能性がある
- 実力派ばかりなので、自分も磨かれやすい
アニメや映画などのオーディション情報は全ての事務所に通知されますが、それ以外にも「事務所指定」で来る仕事があります。
それが、大手の事務所にはとても多いのです。
例えば81プロデュースだとNHKの仕事が入ってきやすいというのは有名です。
それ以外にも、制作側が「こういう企画で作品を作りたいんだけど、こんな声が出せる声優さんに出演してほしい」と直接事務所に打診が行く場合があります。
こういう打診を受けるのは、業界外の人でも知っているような有名な事務所であることがほとんどです。
また、売れている先輩がいると、その先輩が出演しゅる作品に「同じ事務所の後輩として」ガヤで出させてもらえる、という機会に恵まれやすくなります。
さらに、売れている先輩を間近に見る機会がある、実力派でハングリーな人が多い環境なので自分も磨かれて自然と努力しなければいけない環境に置かれるというメリットもあります。
ただし、メリットばかりではありません。
- 人材が多いがゆえに埋もれるリスクがある
- 芽が出なそうなら切られる(クビになる)
大手はたくさんの人材を抱えています。
ホームページの「所属声優」に掲載されているのは、実は売れている一部の人だけで、掲載されていない「売れていない声優」がたくさんいる事務所もあります。
事務所にオーディションの話が来ても、売れている一部の人にだけ声がかかり、自分にはまったく話も来ないということは珍しくありません。大手で人材が豊富であるがゆえに、良い意味で目立たないと埋もれてしまうのです。
さらに、「一度所属できたらそれで安泰」というわけではありません。
仕事をしていない、結果を出せないと事務所をクビになります。もしくは、居心地が悪くなり自分から「辞めます」と言わざるをえないような状況になります。
大手の場合これが顕著で、実は2年くらいでけっこうな若手が消えます。
反面、新人でも社長やマネージャーと頻繁に話せる機会があるようなアットホームな小さな事務所だと、「全然仕事をしていないけど、とりあえずずーっと所属はしている」というケースは珍しくありません。
良くも悪くも、大手はよほどハングリーで魅力がある人材でなければ、生き残っていけないのです。
中小の声優事務所が運営する声優養成所を選ぶメリットとデメリット
一方、所属する声優が少ない事務所やできてまだ間もない事務所、そこそこ歴史はあるけれど、売れている声優・有名な声優がまだそんなにいない事務所の場合はどうでしょうか。
事務所自体の名前もそれほど知られていないため、養成所はあっても生徒がとても少ない場合があります。
この場合、吉と出るか凶と出るかは同期と先生にかかっています。
熱心でハングリーな同期が多く、先生もそれを受け止めてくれる場合は、密度の濃いレッスンになる可能性があり、養成所の授業がとても実り多いものになるでしょう。しかし、習い事の延長感覚で通う同期が多く先生も情熱がそれほど強くない場合は、「なんでここにお金を払ってしまったのだろう」と後悔することになるかもしれません。
また、できたばかりの養成所でも、事務所や社長がガツガツやる方針で、超スパルタで生徒を鍛えようとするところもあります。この場合も吉だといえるでしょう。
反面、養成所を「事務所を運営するための費用集めの場」にしている事務所も(残念ながら)少なからずあるため、なあなあの、形ばかりのレッスンが行われている場合もあります。
こればかりは各養成所の雰囲気によるため、事前に見学をして、どんな雰囲気で授業がおこなれているのか、先生や生徒の熱量はどのようなものか、どんな生徒が多く通っているのかを自分の目で確認するのが一番です。
さて、中小または新しい声優事務所に所属するメリットも見てみましょう。
- 人材がまだ少ないと、自分が所属できるチャンスが多い
- 人材がそれなりにいても、所属できる可能性がある
いい意味で「入口のチャンス」が多いのが、中小規模の声優事務所やできたばかりの声優事務所です。
「所属できる可能性」で考えると、中小に軍配が上がります。
いい意味で緩いところも多いので、「それなりに実力があるなら、どんどん所属させよう」というところもあります。
ただし、デメリットもあります。
- 仕事が少ないかもしれない
- 悪徳事務所であるリスク
大手は自分たちでコンテンツを作ったりイベントを企画したりして仕事の機会を広げますが、そこまでの体力・リソースがある中小は少ないです。
また、大手のように「事務所指定」で来る仕事もないとは言いませんが少ないので、必然的に仕事の数は少ない恐れがあります。
ただし、事務所自体が特定の制作会社や音響監督と繋がっている場合、そこからの仕事があるので、「ある一定の仕事は偏って多い」ことも。
それから、数は少ないのですが、名前をあまり聞いたことがない事務所や、ホームページを見ると所属している声優はいるけれど、どの人にもパッとした実績が少ないという場合、悪徳事務所である恐れがあります。
当方が知っている悪徳事務所の例として
- 所属させたあとは事務所指定のレッスンを受けることが条件で、そのレッスン代が高額(事務所はレッスン代を収入源としている)
- 作品に出演したギャラを事務所が支払ってくれない(それが恒常化している)
所属した声優が次々に辞めて(退所)いく「人の入れ替わりが激しい事務所」は要注意です。
あえて厳しい環境を求めて大手にチャレンジするか、可能性を求めて中小や新規の事務所に挑むかは自分次第。
いずれにしても、事前にレッスンの様子を見学し、「自分にはここが合うだろうか」「ここに入って1年または2年、レッスンを受け続けたいだろうか」と確認することが重要です。