声優と俳優の演技はなぜ違う?声優に必要とされる「声の演技力」とは

最近のアニメ映画では声優ではなく、ドラマや映画に出る俳優が声優としてキャスティングされることが増えています。

また、声優でも俳優でもないお笑い芸人が声優として参加することも。

単純にテレビで頻繁に顔出しをしている俳優やお笑い芸人のほうが声優より知名度が高いため、「キャストの名前で動員数を増やしたい」という目論見のもと、俳優やお笑い芸人(時にはタレントやモデルも)がキャスティングされるのですが、実際に見てみると

「声優さんの演技と全然違う……」

「なんだか、俳優さんや芸人さんは棒読みだ」

「俳優や芸人が話すのを聞くと、一気に気持ちが現実に引き戻される」

と感じている人も多いでしょう。

しかし、そんな俳優や芸人でも、実際にドラマで演技をしている姿を見たり、お笑いでネタをやっている姿を見ると「下手だな」「演技力ないな」とは感じないはずです。

むしろ、彼らの演技に感動して泣いたり、お笑いで大爆笑することが多いのでは。

一体なぜ、俳優や芸人が声優をやるとへたくそに聞こえるのでしょうか。

声優を目指すうえで、求められる「声優の演技力」って一体なに?

俳優と声優、両方に挑戦した私が答えます。

声優は「声だけ」で全部が伝わるように表現している

俳優・女優の演技は、声(セリフの言い方)はもちろん、しぐさや表情、体の動き、目線、自分の体のすべてを使って演技します。

そのため、「ここではこう動こう」「こういう気持ちをより伝わるよう、こういう風に体の動きで表現してみようか」「ここでは目線をこう動かすと、役の感情が伝わりやすいな」と、全身の動きを考えています。

そのため、声(セリフ)だけに頼る必要はありません。

例えば、演技をしている最中にちょっとした事故があってセリフが飛んでしまっても(言うのを忘れてしまう、セリフが出てこない)、それを匂わせず全身でその役の感情を状況に合わせて適切に表現していれば、それで通ってしまうのです。

なんなら別の役者が変わりに言うべきことを言ったり、そのセリフをなかったものとして次のセリフを言えば話が進んでしまうことも珍しくありません。

それが通るのは、役者がセリフを言わなくても「身体や顔が演技をしているから」です。

けれど声優はそうはいきません。

そもそも声優は常に台本を片手に、それを見ながらマイクに向かってセリフを言うので、セリフを飛ばすということはありません。しかし、声優の演技は声が全て。

俳優なら目線の動きで伝える感情も、声優は「声で」伝えないといけないのです。

例えばこれが映画や海外ドラマの吹き替えで、役者の顔や表情といった助けがあれば、それも加味して日常生活で話すようなトーンでお芝居をしてもいいのですが、そこまで細かく登場人物の感情を表現できないアニメ(特に単純化された絵)や、そもそも絵がないボイスドラマやラジオドラマでは、より「声だけで伝わるように」表現しなくてはいけません。

そのため、どうしても声だけの表現となると、リアルで会話をするトーンより少しオーバーになることがあります。

それは、「声だけで伝わるように」という、声優が工夫を重ねた表現だからです。

そして、その声優独特の表現は、特にアニメやボイスドラマにマッチします。

俳優や芸人、タレントが演じるアニメの声を聞いて「何か違う」「違和感がある」というのは、彼らが「声だけで伝わる演技」を知らないから起こるギャップなのです。

「声だけで全部伝える」声優の演技はどうやって勉強すればいい?

「それなら、その『声だけで全部伝わる演技』を勉強したい、身につけたい!」と、きっと皆さんは思うでしょう。

けれど、少し厳しい話をします。

それは、まずは俳優や女優が学ぶ、体全身を使う演技を学んだ先にあります。

演技をする上で何より大切なのは、そして必須なのは「自分の心を震わせること」です。

役が悲しい思いをしていれば、役を演じる自分も同じように悲しくなって、役が喜んでいれば、役を演じる自分も同じように喜ばなくてはいけません。

本物の役者は、役と感情をシンクロさせて、自分が役と同じように感情を動かされて、泣いたり笑ったり喜んだり戸惑ったり驚いたりします。

台本に「物陰に隠れていたBが通りかかったAを驚かせる」と書いてあったとき、台本を読んでいるAを演じる役者は、「Bが物陰にいることも、これから自分が驚かされることも知っていながら、Bが脅かしてきたとき『本気で』驚いて、飛び上がり、なんならしりもちをついたり叫び声をあげたり、驚きのあまり何も言えずに立ち尽くしたりします。

それっぽく「驚いたふり」をするのではなく、リアルに心臓がドキッとする、あれを自分の中で起こすのです。

そういうことができる役者は、役が怒れば自分もそれにシンクロして怒り、役が迷えば自分も同じように迷い、役が照れれば自分も同じように照れます。

ですから、それを見ている方は、「本気でその人の感情が揺れ動いているので」違和感を感じずに引き込まれ、感情移入するのです。

これは、声優でも俳優でも同じです。

これができないと「それっぽいことをしているだけの人」なので、常に嘘っぽくなります。

「それっぽいこと」が上手な人でも、本気で心の底から感じて心が揺れていないと、どうも薄っぺらく、見ている方にもそれが伝わります。

ですから「演技する人」「役者」になりたければ、まず「いかしにして心を揺り動かすのか」「役とシンクロするのか」を技術として身につけなくてはいけません。

その勉強は声優でも俳優でも同じです。

多くの声優養成所に舞台のレッスンや舞台公演があるのは、そういうこと。

声だけで演技をするより、自分の体を使って演技をしたほうが「本当に心が揺れる感覚」を掴みやすいのです。

それができた上で、今度は「身体を動かさずに心だけを動かして、役とシンクロさせる」練習をします。それが声優の「声の演技」の練習です。

ですから、「声の演技」は、普通の役者が行う「演技の練習」の先にあるのです。

「声だけで全部伝える」声優の訓練方法は、声優の数だけある

じゃあ役者の演技の基本「心を動かす」「役とシンクロする」ができるようになったとして、その先はどうやって「声だけで伝える練習」をすればいいのか、どのくらいあんばいで、体も使って演技をするときよりオーバーに演じればいいのかは、声優の数だけ方法があります。

それぞれの声優が試行錯誤しながら「自分はこうだ」「こうするとイメージに近い強度で表現できる」と自分なりの技を身につけていきます。

もしかしたらそれは、あなたの先生が教えてくれた方法があなたには腑に落ちて理解できるかもしれませんし、「先生が何を言っているか分からない」と感じるかもしれません。

先生との相性の問題もあります。

A先生の言うことが理解できなくても、B先生の言うことはスッと理解できて、自分でもできるようになるかもしれません。

また、先生によっては(優れた声優は無意識で調整していることも多いため)「そんなことを考える必要はない」と教えてくれないかもしれません。

けれどもし、この方法を体系的に学ぼうとするなら、やはり声優養成所(それもマスタークラスのような上級クラス)で、「声優になる方法を教えること」「現場に出て通用できる声優になるように、表現を教えること」を仕事にしている”プロの先生”から学ぶのが早いはずです。

養成所には複数の先生がいますので、自分と相性の良い先生を探しやすいというメリットもあります。

自分にはまだ分からないこと、できないこと、できていないかもしれないこと。

声優のたまごの自分の今の実力はどのくらい? オーディションで客観視してみる

それらをはっきりさせる一つの方法として、オーディションを受けてみるという方法があります。

合否も一つの実力の目安ですし、オーディションで「君はここができていない。こうするといい」とアドバイスをもらえることもあります(絶対ではありません)。

例えば、代々木アニメーション学院のオーディションは、演技力や発声、活舌などがどのくらいできているかを点数化して渡してくれるシステムになっています。

代アニのオーディションは無料で受けられるので、「今の自分を知る」という意味でも、受けてみては。

<代アニアドバンスコースの場合>

年齢制限 なし
在籍期間 半年(平日夜間もしくは土日)
学費 入所金30,000円、受講料120,000円
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代々木アニメーション学院

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