心身を病む声優急増、「ここまでが声優の仕事」を自分で決めてもいいの?

ラブライブ!に出演している声優・楠木ともりさんが遺伝性疾患「エーラス・ダンロス症候群(関節型)」の診断を受け、「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」(ニジガク)優木せつ菜・中川菜々役を降板することが発表されました。

その流れを受け、ウマ娘に出演している高野麻里佳さんが適応障害で活動を制限することや、バンドリ!の前島亜美さんは2カ月SNSの更新がなく、所属事務所から体調不良でライブに出演できないというお知らせが発表されていることから「声優に過度な負担をかけすぎなのではないか」という声が上がっています。

声優を目指す皆さんも「本当は演技だけをやりたいのに、歌やダンスも練習しなくちゃいけないのがしんどい」「重い」「そこまでやらなくちゃいけないの?(いけないよね…売れてる人気声優を見ると、みんなやってるし)」と胸中にさまざまな思いを抱いているのではないでしょうか。

アイドルみたいな活動をしている声優以外にも、活躍している声優はいる

声優というと、アニメやゲーム、洋画の吹き替えに声を当てる以外にも、ライブをして歌って踊って、バラエティに出演してラジオをやって……と、マルチタレント以上の活動をしている人がまず思い浮かびます。

また、最近はキャラクターが歌って踊るコンテンツが人気を博しシリーズになりやすいことから、コンテンツのイベントに声優が出演するのが「当然」、キャラソンや動画と同じダンスを声優がすることが「当然」になっています。

声優雑誌に取り上げられるような声優はいずれもアイドル活動をしているので「声優はそういうもの」という認識になっている人も多いと思います。

けれど、では実際はどうなのかと言えば、アイドル的な活動をする人が目立っているけれど、そういう仕事は一切しない、顔出しもしないし顔も知られてないという売れっ子声優・ナレーターも確実に存在しています。

例えば石田彰さん、櫻井孝宏さん、津田健次郎さんはキャラソンを歌わないことで有名ですし、坂本真綾さんも歌手としては歌を歌いますが、声優としては必然性がなければ歌わないスタンスで仕事をされています。

三木眞一郎さんは「顔を出すことでリスナーが役に対して抱いているイメージが崩れるのがいやだ」という理由から、作品に付随する撮影では顔を台本で隠して写真に写ることが多いです。

大御所の名前ばかり出してしまいましたが、新人でもアイドル系コンテンツの仕事を受けなければ、アイドル的な活動をせず、声の仕事だけに集中できますし、そうしている人も多いです。

なぜ売れっ子声優はヘトヘトになるまで「歌もダンスも演技も」と頑張ってしまうの?事務所がさせているの?

「でも、私が目指している声優の〇〇さんは歌うし躍るし、ろくすっぽ休んでないみたい」と思う人もいるかもしれません。

声優の仕事において、事務所が勝手に仕事を決めることはまずなく、仕事のオファーがあれば声優に「やりますか?」と打診がいきますし、多くの仕事は声優自身がオーディションを受けて取っている仕事です。

好きか好きでないかは置いておいて、「本人が納得して受けている仕事」ということになります。

【声優の引退】どんな時に引退する?多い引退理由は?

さて、声優は個人事業主です。仕事をした分しかお金が入ってきません。

そして会社員と違って、来月も、来年も今と同じように仕事があるかはまったく不明、神のみぞ知る世界です。

さらに、実力溢れる先輩や後に控えてレッスンで自分を磨き続ける後輩が何人も何人もいて、今は売れっ子でも気を抜けばあっというまにそのポジションを他の誰かに奪われるという恐怖を常に抱えています。

ですから、「仕事があるなら全部やりたい、自分の睡眠時間を削っても仕事は受けたい、今いっぱい頑張って、より自分の足元をしっかり固めたい」と思っています。

また、売れっ子声優は謙虚な人も多いので「せっかく私を指名してくれたのに、断るなんて申し訳なくてできない」と考えている人も多いです。

そして仕事を受けた以上、ファンも関係者も満足させるパフォーマンスをしなくてはいけないとストイックに考えています。

自分の体力や精神力を把握してうまく息抜きをしつつ回して行ける人も、もちろんいるでしょうが、そこまで器用にはできずに自ら自分を追い込んでしまう人もいるでしょう。

売れっ子声優が心身を病んでしまうのは、仕方がないとも言えます。

ドラフト式オーディションがある声優養成所4選

フリーランスの声優になれば、完全に自分で仕事をコントロールできる

とはいっても、養成所で「歌も踊りもできなきゃ、今時は仕事なんて来ない」と言われてる、という人は多いと思います。

確かに一般に名が知られているのは、歌も踊りもできてビジュアルもいいアイドル声優です。

事務所・養成所としても「売れてドル箱になる声優はアイドル系、だからそういう子を育てたい」と思うのは当然でしょう。

 

けれど、「私は演技がしたいのであって、アイドルになりたいわけではない」という硬派な声優志望者もいるはずです。

そういう人は、無理に歌ったり踊ったりに時間をかけず、自分の意思を貫いてください。

※飛びぬけてビジュアルがいい場合は、アイドル系を目指した方がデビューしやすい・人気者になりやすい可能性は高いですが…

 

事務所がそれを理解してくれればいいのですが、もし事務所の理解が得られない場合はフリーランスの声優を目指すという手もあります。

私が最近注目しているある男性のフリーランスの声優(大手事務所から独立した有名声優ではなく、ほとんど名前を知られていない方で最初からフリー)は、演技力の確かさから大人気で、数日おきに新作に出演するお知らせをSNSで告知しています。

フリーランスだと事務所にマージンも取られないので、そうとう稼いでいるはずです。

声優の収入だけで生活できているという女性のフリーランス声優も知っていますが、こちらも一般にはほとんど名前を知られていません。

男性のほうは完全に声のお仕事だけ(ナレーションではなく演技)、女性の方は演技中心+歌が好きな方なので、ライブもときどき、というかたちで活動されています。

そういう方法もある、歌わない声優・踊らない声優でも「食べていける」道があることを覚えておいてください。

声優事務所に所属したけど、仕事が入ってこない。引退するべきかもう少し頑張るべきか

声優と両立できる仕事、両立しやすい仕事の条件