声優がアニメのアテレコをしたギャラは、各声優の「ランク」を基準に算定されます。
声優業界や制作会社にいなければ詳細が見えない「ランク」について、詳しくお伝えします。
「ランク」でギャラが決まる声優業界
声優には「ランク」があり、どの「ランク」にいるかでギャラが決まります。
ランクなし(言い値)
ランク45(Aランク)(1本45,000円)
~
ランク18(1本18,000円)
ランク17(1本17,000円)
ランク16(1本16,000円)
ランク15(1本15,000円)
ジュニア(1本15,000円)
上記の金額を基準として、
(1)作品の時間(何分の作品なのか)
(2)どのような目的で作られている作品なのか(TVアニメか映画か)
でギャラが変わります。
作品の時間
30分:1
60分:1.5
120分:2.3
作品の目的
テレビ:80%
映画(劇場公開):150%
ランクの基本料金に「作品の時間」と「作品の目的」を掛け算して出てきた金額が、出演声優がもらえるギャラというわけです。
ちなみにジュニアランクの声優が30分のTVアニメに出演した場合…
ジュニアランク(15,000円)×30分(1)×テレビ(1.08)=27,000円
30分の作品に出演すると27,000円が制作会社から所属事務所に「ギャランティ」として支払われます。
けれどこれが全て声優のもとに振り込まれるわけではなく、この27,000円から事務所に支払うマネジメント料(3割前後・事務所によって異なる)と10%の源泉徴収が差し引かれるため、実際に声優のもとに渡るのはやはり15,000円前後となります。
モブでもちょい役でも主演でも、ランクが同じならギャランティは同じ
このようなギャランティのシステムから、声優のお仕事は「どんな役でも、同じ作品・同じランクなら支払われるギャランティは同じ」です。
主演でずーっとしゃべりっぱなしでも、二言三言しかセリフがないモブでも、そもそも「ガヤ」で役名すらもらえなくても、出演すればギャラが支払われます。
もし、主演声優がジュニアランクで、ガヤの声優もジュニアランクだった場合も、制作会社が各声優に支払うギャランティは同額となります。
事務所から天引きされる「マネジメント料」は事務所によって違うため、もし主演声優が所属する事務所のマネジメント料が3割で、ガヤの声優が所属する事務所のマネジメント料が2割だった場合、「同じジュニアランクなのに、主演声優よりガヤの声優のほうが『手取りのギャラ』が高額」という事態にもなります。
ちなみに、一つの作品の中で一人の声優が複数の役を演じることもよくあります。
たとえば、「隣のおじさんとと主人公の弟役と主人公の学校の友達役の3役をやる」というような感じですね。
演じる役が増えてもギャラは変わりません。1役だろうが5役だろうが、もらえるギャラは同じです。
ちなみに海外ドラマの吹き替えの場合はまた別で、作品ごとにギャラが提示されます。一般的にアニメよりも高いギャラがもらえることが多いのですが、ドラマは出演者の数も多いため、主役級以外は一人で何役も兼ねて演じるのが一般的です。
そのため、「いろいろな声色が出せる声優」「起用に演じ分けられる声優」が起用されます。
デビューしたら「ジュニアランク」になる
さて、このランクの一番下は「ジュニアランク」で、全ての声優は皆「ジュニアランク」からスタートします。
セリフが一言だけでも、ガヤでも、何らかの作品に出演すれば「ジュニアランク」というランクがつきます。
ジュニアランクにいられるのは3年間と決まっており、3年を過ぎたら事務所と相談のうえ、自分のランクを自分で決めます。
ジュニアランクにいるうちにたくさんの実績を積み、ファンがたくさんついて顔も名前も売れた場合、高いランクにすることも可能ですが、あまりランクを高くしすぎるとギャラも高くなるため、オファーがかからなくなる恐れがあります。
声優業界には「ランクを上げることはできても下げることはできない」という慣習があるため、「様子を見ながら少しずつランクを上げていく」のが普通です。
製作費の中で声優をキャスティングするため、ランクが高い声優を起用できないことも…
テレビアニメや映画には「予算」があり、「声優さんに支払う金額はこれだけ」と上限が決まっています。
その範囲内でキャスティングをするので、予算があまりない作品の場合は、どうしてもジュニアランクやランク15など、低いランクの声優を集めることになります。
もしくは目玉として、名前だけで集客できる人気声優を呼んで周りをジュニアやランク15の声優で固めるということも珍しくありません。
そのため、そこそこ上手いジュニア声優にはお声がかかることが多く、1日にいくつもの現場を回ることも…。
収録が終わると「すみません、次があるんで」と打ち上げに参加せず次の現場に向かうジュニア声優は珍しくありません。
けれどランクがついてギャラが高くなったとたんに、声がかからなくなって仕事がなくなってしまう、という例は珍しくありません。
「あの人、デビューしたばかりの頃はいろいろな作品に出ていたのに最近見かけないな」と思う声優がいれば、おそらくランクがついて、ランク15以上になったから、という可能性が考えられます。
ナレーションやゲームはランク関係なし!
声優の仕事はアニメや海外ドラマだけではありません。
ナレーションやゲームで活躍する人もたくさんいます。
ナレーション・ゲームは、ランクは関係なし。
ナレーションは一つの仕事ごとにギャラが提示され、TVのドキュメンタリーやテレビCMは非常に高額です。
ゲームはワード数でギャラが決まり、ジュニアランクの場合はだいたい1ワード30円ほどだと言われています。
一般的にはテレビアニメに出演する声優のほうが名前を知られていますが、稼いでいるのはレギュラーでTV番組のナレーションを務めている人やCMのナレーションの仕事を何本も取る人です。
声優の仕事だけで食べていける人はとても少ない
「自分以外の人物を演じられる」「動物やロボットや、見た目が自分とは全然違う人物も演じられる」声優はとても夢がある仕事。
けれどその実、声優の仕事だけで生活できるほど稼げている人はほんの一握りです。
多くの声優がバイトや副業をして収入を補っています。
また、現在売れている人気声優でも、その人気がずっと続くわけではありません。
ですから、多くの声優が自分のYouTubeチャンネルを作ってそこから収益を得たり、自分のブランドを作って商品を売り、そこから収益を得たりして「安定した収入」を得るために日々努力しています。
声優として演技力を鍛える一方、生活を支えるためにも頭と体、そして時間を使わなくてはいけないのです。
簡単ではないけれど、いつか自分も声優になったときのために、「安定して稼げる副業」のためのスキルを身につけておくと安心して声優業に取り組めますよ。
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